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1922の感想(ネタバレ有)

Netflixオリジナル映画「1922」を観ました。
スティーヴン・キング原作の終始暗い画面の地味なホラー。怖さはほぼない。
短編小説や洒落怖が大好きな私は結構楽しめました!
ネタバレ有で感想を書きます。


あらすじ。
1930年のある日、ホテルの一室で薄汚れたおっさんが自分の過去の罪について書き留めるシーンから始まる。
1922年、おっさんは妻と14歳の息子と田舎で農業をしながら暮らしていた。
おっさんの誇りは自分の土地と一人息子だけ。
しかしその土地は妻が父親から受け継いだもので、妻は土地を売って都会で暮らしたいと言い出す。
当然おっさんは反対するが、妻は納得せず、土地を売って離婚しよう、息子は私が引き取ると言う。
土地の買い手は大手工場で話はついているし、もう弁護士も雇っていると。
土地の権利は妻のもの、土地も息子も失いたくないおっさんは追いつめられる。
そこで妻殺害を計画。近所のガールフレンドと離れたくないという息子にも手伝うよう持ち掛ける・・・


このあとのストーリーも最後まで書いちゃったんですが、あんまり長いので先に感想を。笑

主人公のおっさんはいつも薄汚れていて、ぼそぼそ話し、品性もない感じなんですが、なんかカワイイんですよね。
常に怯えたような目や表情が母性本能をくすぐるんでしょうか?笑
トーマス・ジェーンという俳優さんで、ミストやドリームキャッチャーでも主役やった人らしい。
画面全体は常に暗く、とうもろこし畑はやけに広く色がないんですが、主人公以外のキャラは小綺麗です。
これは恐らく彼の回想だからかなと思っています。
罪を犯した自分は汚く、周囲の人間は綺麗。忌まわしい過去のせいで、守りたかったはずの土地も輝いては見えない。

主人公もカワイイんですが、息子はもっとカワイイです。
両親の離婚問題でガールフレンドと離れ離れになっちゃうかもとうろたえるところ。
母親のガールフレンドに対する下品な発言にものすごく怒るところ。
母の死体を井戸に埋めようとする父に対して「あれはお墓じゃない」と訴えるところ。
母親殺害後で落ち込んでいるはずなのに近所のおっさんの訪問に嬉しそうにするところ。
駆け落ちするときの父親に宛てた手紙に愛していると書くところ。
「Sweetheart Bandits」と報じられ、自らもそれを名乗るところ。(ここ一番カワイイ)
最初は見ているだけだったガールフレンドが強盗に加担するのに驚くところ。
吹雪のなか一生懸命枯れ木を集めて火をつけて暖まるところ。
ほら火が付いたよという感じでガールフレンドに目をやるところ。(そして彼女の死に気づく。泣)
死んだガールフレンドに上着を掛けてやり、自分も隣に入るところ。(そして拳銃で自殺。泣)

呪われた土地と狂った父親はキングらしいセットかなと思います。
この話は土地の呪いなのかは不明ですが・・・元から呪われていたのか、死んだ妻の呪いなのか。
呪いだとしたらガールフレンド一家は完全に被害者ですね。
おっさんは死んだ息子の悲惨な姿を見て「ひどいことを、俺の息子に」と言いますが、これは妻に対しての言葉なのかな~と思っています。
ただ、第三者から見れば呪いではないんじゃないかなという気がします。
この妻の幽霊は不気味なだけで何もしないんですよね。おっさんを殺しもしない。
息子の葬式ではきちんと座っている。笑
おっさんは妻の幽霊や人(牛)食いネズミの存在を信じているが、実際は自ら破滅の道を歩んでいる愚かな男の話…
息子の顛末を妻が話すところで「死人にしか知りえない話」と言っていますが、「恋する強盗事件」は顔写真付きで新聞にも載っているし、本当に死人にしか知りえないのか?って感じですしね。
おっさんは「妻の気が済むまで生かされた」と思っているようですが、実際は自殺する勇気もなくただ生き長らえてしまっただけかと。
ガールフレンドの父親に土地を売ろうとしたり、そのとき右手のことを言われ手を隠すシーンで、なんとなく彼の図々しさや気の利かなさを感じます。
さらにおっさんは妻殺害を自分の中にいるもう一人の自分のせいにしています。
個人的には、理不尽お化け物ではなく、不器用で身勝手な男の自業自得話というのがしっくり来ます。
最後はきっと自殺なんでしょうが、家族たちに迎えに来てもらえてやっと救われたような。。。

ところでキング原作の映画はだいたい観たかな~と思っていたんですが、
調べてみると本当にたくさんあって半分も観ていませんでした。笑
中学生の頃に母親の持っていた小説「ペット・セマタリー」を読んでS・キングの存在を知りました。
たしか前編と後編に分かれていて、前編の最後までホラーらしい展開がなく、子持ちおっさんと近所の訳ありおじいちゃんとの日常が描かれているだけで退屈だなーと思いながら読んでいた記憶があります。
しかしその前編があるからこそ、息子の死に深く悲しみ、ホラーパートでは恐怖に震えることができたんだなーと納得しています。
ラストで妻を埋めにいく主人公には複雑な気持ちになりました。
埋めちゃダメー!っていうより、墓の呪いじゃ~祟りじゃ~って感じでただ見守るしかできないような。
ああもうこの人はあの土地の呪いから逃れることはできないんだな、かわいそうに・・・っていう諦めの気持ち。
私のバッドエンド好きはあの時形成された気がします。笑

さてストーリーの続きへ戻ります。。。

(上の続き)
ある日の夜、土地を売ることに賛成すると妻を騙して泥酔させ、寝ているところを息子に抑えさせ、刃物で殺害。
遺体は井戸へ捨て、井戸ごと埋める。
埋める前に井戸を覗くと、妻の死体が動いている・・・と思ったら死体の口から大きなネズミが這い出して来る。
おっさんは思わずネズミに発砲。これ以来、彼はネズミがトラウマに。
妻失踪について弁護士や保安官に尋ねられるが、ある日突然お金を持って家出したことにして上手く誤魔化す。
(当時のアメリカの田舎では女性が一人いなくなっても大した騒ぎではなかったらしい)
大切なものは失わずに済み、鬱陶しい妻は消え、すべてうまくいっているはずだった。
しかし彼は時々、妻の幽霊(幻覚)を見たり、そこら中にいるネズミに恐怖心を抱いたりするようになる。
また、息子も様子がおかしいことをガールフレンドに気づかれてしまう。
さらに悪いことに、息子はガールフレンドを妊娠させてしまう。
息子はガールフレンドと結婚して子供を育てたいと言うが金がないためおっさんに反対される。
この土地を売って母さんと都会に行っていればよかったと嘆く息子。
そこへガールフレンドの父親がやって来る。
彼は農業で成功した金持ちで、おっさんにも親切で親友のような存在だった。
しかし当然今回のことには怒っており、娘を出産のため遠くの施設へ行かせるという。
そのための金の一部(かなり少額)をおっさんに負担するよう言うが、おっさんにはそれすら支払えない。
ガールフレンドの施設行きを聞いた息子はヤケになり、駆け落ちすればいいんだと言う。
おっさんは当然反対、妊娠5か月の女と駆け落ちなんてバカなまねは辞めろと。
息子は「僕に指図するな。母さんを殺すときだって大騒ぎだったくせに。あのときだって他の方法があったはず」と言いその場を去る。
翌日おっさんは金を借りるため街へ出るが、その隙に息子がおっさんの車を盗み、駆け落ちする。
「自分を探すようなことをすれば警察にすべてを話す。どんな状況でも愛している」と手紙を残して。
家に一人となったおっさんは妻の亡霊に怯え、気を紛らわすため大金を借りて仕事を増やそうとする。
しかしその金を戸棚に隠そうとしたとき、ネズミに手を噛まれる。
かなり深く噛まれており病院に行きたいが、外は猛吹雪で車のエンジンもかからない。
寒さと痛さに震え、鎮痛剤を酒で流し込む。
すると家の戸が勝手に開き、妻の亡霊と大量のネズミたちが家へ入って来る。
おっさんは逃げるが追いつめられ、妻は死んだ者しか知らない事実を囁く。
駆け落ちした息子は「恋する強盗」を名乗り金や車を盗み生活していたが、手際が悪くガールフレンドがお腹を撃たれてしまった。
そして逃げている途中に事故で車が動かなくなる。
吹雪のなかガールフレンドを抱えなんとか空き小屋に避難するが、ガールフレンドの傷は深く、お腹の子も彼女も死んでしまう。
そのことに絶望し、彼自身も拳銃で自殺。二人(三人?)の死体はネズミの餌となる―――
おっさんは自分を殺せと妻に懇願するが、妻は無視。妻の気のすむまでおっさんは生かされることになる。
その後、おっさんは誰かの車に乗せてもらい病院へ行くが、片腕を失う。
病院で保安官がおっさんの妻らしい死体を見つけた、きっと強盗に殺されたんだろうと話す。
さらに後日、おっさんは息子の遺体と対面する。
息子は顔面や体中をネズミに食い散らかされ、かなりショッキングな状態に。
業者に遺体の修復と上等な棺桶を頼み、立派な葬式をあげる。
ガールフレンドも同じく立派な葬式をあげ、裕福な家庭である彼女の葬式にはたくさんの人が来た。
一方、おっさんの息子の葬式の参列者はおっさんと、亡き妻の亡霊とネズミたちだけ。
片腕になり家の修理もできないおっさんは茫然自失となり、屋根に穴の開いた家で牛と暮らす。
借りた金は息子の葬儀で使い果たしており、例のガールフレンドの父親に土地を買わないかと持ち掛ける。
しかし彼は娘の死後妻に家を出ていかれてしまい、自分の身勝手さを悔やんで荒れていた。
「俺たちは妻も子供も失った。あの土地は呪われている。もう二度と来ないでくれ」とおっさんを追い返す。
結局土地は安値で工場に売ることに。
街へ出て6年間工場で働くが、ネズミの存在が彼を追いつめ仕事が続けられなくなる。
その後の2年間は働かずただ酒を飲み、息子が逃避行中に行った場所を訪ねて暮らした。
そして1930年の現在、ホテルの一室で自分の罪を書き留めているが、そこにも大量のネズミが集まって来ている。
死んだ妻、息子、そのガールフレンドがドアのところに並んで立ち、包丁を持った息子が「父さん、すぐ終わるよ」と声を掛ける。
おっさんは怯えながら、結局誰も逃れられないのだ・・・で終わり。